東日本大震災 時系列まとめ ブログ

東日本大震災の出来事を時系列にまとめました

東電旧経営陣3人への被告人質問

2018年10月、東京地裁

東京電力福島第一原発事故に関し、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人に対して、初めてとなる被告人質問が始まった。

武藤栄 被告 (元副社長。2008年当時は原子力・立地本部副本部長) (被告人質問16~17日)

論点1:08年6月に、被告は、津波の予測値が最大15.7メートルという報告を受けたが、その対策を先送りする指示をしたのではないか?
  • 強制起訴の検察側の主張:翌7月に、津波対策を先送りし、土木学会に検討を依頼するよう指示した。(そもそもこの報告は、すでに2008年2月の「御前会議」にて、国の地震予測である長期評価に基づいて津波を対策することが了承されたことを受けて、行われたものである。長期評価をやめて土木学会の検討に切り替えるという意図がある。)
  • 武藤被告の答え:先送りと言われるのは心外。予測値を報告した社員自身が「信頼性がない」と説明したので、会社として決定できる水準ではなく、自分に権限もなかった。
  • 疑問点:被告に権限は無かったのか? 評価の方式を、国の長期評価から、土木学会の検討に切り替える権限はあったのか? 切り替えた理由は何か?
論点2:震災直前の2011年3月に、被告は、東電担当者から原子力安全・保安院津波対策を報告するとメールを受け、「話の進展によっては大きな影響がある」と返信したのではないか?
  • 強制起訴の検察側の主張:メールを示し、返信したと主張。
  • 武藤被告の答え:読んでいない。事故後に探したが見つからなかった。
  • 疑問点:メールの真贋は? 重要な事項の報告を受けていなかったのか?

 なお、強制起訴の検察側は、他にも、株主総会の想定問答(09年6月)や、福島県地震対策を説明する際の想定問答(08年3月)も併せて示し、被告の関与を追及した。

 

武黒一郎 被告 (元副社長。2008年当時は原子力・立地本部長) (被告人質問は19日)

論点:2008年2月の「御前会議」で、国の地震予測である長期評価に基づいて津波を対策することが了承されたのか?
  • 強制起訴の検察側の主張:被告は了承した。部下の供述調書にある通りである。また、08年3月の常務会でも、「津波の評価が従前を上回る可能性あり」という資料が配られ、議事録には「提案は了承された」と記録がある。
  • 武黒被告の答え:「了承」というのは強引だ。御前会議は意思決定の場ではない。津波の評価は、常務会が決定できることとは思わない。
  • 疑問点:示された資料と答弁とが矛盾しているように見える。(一般に、重役会議では、高度に技術的な事項については、各部署での検討結果を追認するものである。仮に、これらの重役会議で実質的に了承されたと認めても、武黒被告には別段、責任が増えるわけでも減るわけでもない。だが、資料が示されても、「了承」ではないと答えている。)

幕間:東京電力 ツイッター公式アカウント「#工場萌え」投稿 10月29日

 東電は、重大事故を起こした福島第一原発4号機建屋の内部画像をtwitterに投稿。「#工場萌え」というハッシュタグをつける。批判が相次ぎ、東電はハッシュタグを削除し謝罪。 

勝俣恒久 被告 (元会長)(被告人質問は10月30日)

 論点1:国の長期評価の扱い
  • 強制起訴の検察側の主張:2008年2月の「御前会議」で長期評価を知ったのに、その後、対策を先送りをしたのではないか?
  • 勝俣被告の答え:長期評価の存在を知ったのは、3・11からだいぶたった後。
  • 疑問点:「御前会議」の重要議題でも知らなかったのか? 部下の説明に対して鋭い質問を返すため「カミソリ」として鳴らした敏腕経営者として知られていた被告が、全く知らなかったのか?
論点2:予測値の信頼性
  • 強制起訴の検察側の主張:最大15.7メートルという津波予測が公表されず、対策に生かされなかったのは、予測を隠し持っていたからだ。
  • 勝俣被告の答え:「隠し持ってたわけじゃなくて、試算値ですよ。試算値で騒ぐのはおかしい。15.7メートルに、どの程度の信頼性があるのかに尽きる。」地震対策を担当する部長が「(根拠を)整理すると言っていたので気にとめなかった」
  • 疑問点:試算とはいえ、安全第一の考えからは、対策を取るべき。信頼性が曖昧ならば、まずは対策をするという、安全側に行動するべきではなかったか?